シュールの鬼才,齋藤富蔵「スケッチブックの8図柄」自蛾像や遊画その他の下絵,伝説の画廊MITUGIの包装紙も貴重,重要作品
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戦後美術史の再検証対象として注目される画家・齋藤富蔵
2016年、宇都宮美術館では約140点に及ぶ大規模回顧展「齋藤富蔵展」が開催されました。
齋藤富蔵(1919-1993)は長年にわたり広く知られた存在ではありませんでしたが、宇都宮美術館はその画業を再検証し、大規模な回顧展を実施しました。
同館は、ルネ・マグリット《大家族》をはじめとする国内有数のシュルレアリスム・コレクションを所蔵することで知られており、日本の近現代美術を独自の視点で紹介してきた美術館です。
本回顧展は、宇都宮美術館初代館長であり、美術評論家としても国内外で活躍した谷新氏のもと開催されました。
また、全国美術館会議機関誌『ZENBI』では、足利市立美術館館次長兼学芸員であった江尻潔氏が本展について論考を寄せており、齋藤富蔵の作品について、既存の戦後美術史の枠組みだけでは十分に位置付けることのできない可能性に言及しています。
東京新聞文化欄においても、
「これほど本格派の作家が埋もれていたとは」と評され、その独自の表現世界が紹介されました。
宇都宮美術館開館25周年記念展(2020年)の広報物では、収蔵作品の中から選ばれた代表的作品群のひとつとして齋藤富蔵作品が掲載されています。
近年、その作品群はあらためて検証の対象となりつつあります。
新発見「鳥・蝶 専用肉筆下絵集」
本作は、ご遺族のもとから発見された「鳥・蝶専用」と記された肉筆下絵集です。
走り書きのメモや単純なラフスケッチではなく、繊細なデッサンと着彩が施された作品群が収録されております。
後年の蝶・蛾をモチーフとする重要作群へ至る作家の思考や造形感覚をうかがうことのできる貴重な資料です。
吉祥寺「画廊MITUGI」の包装紙カバーについて
本スケッチブックには、1960年代の吉祥寺ダイヤ街に存在した「画廊MITUGI」の包装紙がカバーとして使用されています。
また表紙には、作家自身によるものと思われる「鳥・蝶専用」との書き込みが残されています。包装紙とスケッチブックがどのような経緯で結び付いたかを示す資料は現在確認されておりませんが、当時の制作環境を伝える興味深い痕跡といえるでしょう。
包装紙に残る「吉祥寺ダイヤ街」の表記も、時代を伝える資料として味わい深いものがあります。
蝶・蛾シリーズの源流を示す資料
宇都宮美術館図録において谷新氏は、1960年代半ばの「自蛾像」シリーズについて言及しています。
本下絵集には、後年の蝶・蛾シリーズへつながると思われるモチーフや観察描写が多数見られます。
繊細なインク線や羽の描写、水彩による着色からは、後年の大作群に共通する造形感覚を随所に見ることができます。
単なる下絵というよりも、作家の観察力と造形意識が凝縮された肉筆資料として興味深い内容です。
本作品について
本作は完成作品ではありません。しかしながら、齋藤富蔵がどのような視点で自然を観察し、どのように形態を組み立てていったのかを知ることができる一次資料です。
近年、美術館による回顧展や研究によって再評価が進みつつある齋藤富蔵。
本資料は、その創作の源流に直接触れることのできる貴重な肉筆作品群としてご覧いただければ幸いです。
紀尾井町の弊社画廊にて展示中のため、ご入札前に店舗販売が成立した場合は出品を取り消す場合がございます。
何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
作家名 齋藤富蔵
タイトル スケッチブック 8作
技法 紙に水彩
サイズ シートサイズ24,5*18,7cm
額サイズ なし
サイン すべてにサインあり。
状態 作品大体良好。多少微細なしみがあるものもございます。「自蛾像」の下絵はしわやしみが目立ちます。
備考 真作保証します。
本スケッチブックについて
本スケッチブックには、後年の代表作へと発展してゆく着想の断片が数多く収められています。
なかでも《自蛾像》や《遊蛾》へ連なる図柄を含んでいる点は大変興味深く、齋藤富蔵作品を理解する上で貴重な資料といえるでしょう。
完成作品は多くを語りません。
しかし下絵には、作家が何を見つめ、どのように思索を重ね、どこへ向かおうとしていたのかが率直に現れます。
私自身、作品群を整理する過程で数多くの資料に触れましたが、齋藤富蔵ほど自身の仕事を丁寧に保存し、その軌跡を誠実に残した作家は決して多くありません。
新聞挿絵のスクラップ、掲載記録、下絵、素描。
それらは単なる保管ではなく、自らの表現に対する責任感の表れであったように感じます。
本スケッチブックもまた、そうした作家の几帳面な仕事ぶりと探究心を今に伝えるものです。
作品を所有する喜びとは少し異なり、作家の思考の過程や創作の源泉に触れる楽しみがあります。
齋藤富蔵の世界をより深く知りたい方にとって、完成作品とはまた異なる魅力を持つ重要な資料ではないでしょうか。